いまに生きる古代ギリシア (著:桜井万里子)

いまに生きる古代ギリシア (NHKシリーズ NHKカルチャーアワー・歴史再発見)

いまに生きる古代ギリシア (NHKシリーズ NHKカルチャーアワー・歴史再発見)

興味のある分野のお気軽な読み物として、割と好きだったりするNHKラジオ講座のテキスト。今度は古代ギリシアについて。


本を読む上で最近の自分の興味は主にローマ時代にあって、古代ギリシアへの興味もそこから派生したもの。ローマの共和政期・帝政期の上流階級の人々からすると、ギリシアは落ちぶれたりとはいえある意味江戸時代の京都みたいなもので(かなり違うか(笑))常に憧れとコンプレックスがあったわけですね。まあ、なんせホメロスイリアスで神々と英雄達の生と死を謡っていた頃、ロムルスとレムスはオオカミの乳を飲んでいた訳ですから。
とにかく、あれほど栄華を誇ったローマ人が憧れ続けたギリシアについて、もうちょっと色々読んでみたいと思っている今日この頃なわけです。


全13回のラジオ放送用のテキストなので、古代オリンピックから神話やイソップ寓話、日本におけるギリシア観、民主主義、哲学など話題も多岐に渡っているのですが、中でも興味深いのが、ギリシアの映画監督テオ・アンゲロプロスの作品について綴られた章。
アンゲロプロスは名前だけは知っているもののその作品は全く見たことが無いのですが、ここで紹介されている「旅芸人の記録」は是非一度観てみたい。旅芸人の一座の視点から、第二次世界大戦前後のギリシア現代史を語るような内容らしいのだけど、その旅芸人の一家の名前にアトレウス家、つまりギリシア悲劇のオレステイア三部作に登場する一家の名が付けられているのだ。もう、この事実一点だけでもこの映画の持つ重い内容を想像するには十分かもしれない。


イチ