雨あがる。


ハギ兄家の新築祝いへ出掛けたハギを見送り、出勤。


どんよりした空の下、バス停でうつむいて寒さに堪えていると、あちらからぱらぱら、こちらからはらはらと音がすることに気がついた。
なんだろうと顔をあげ周囲を見回してみる。どうやら家々の軒や街路樹の枝々から、水滴が落ちる音らしい。そういえば、さっきまで雨が降っていたのだった。


まるで雪の日の翌朝、日の光を浴びた雪が溶けて滴り落ちる音みたいだ、と思った。それは北海道で過ごした幼い日の春の記憶と微かに繋がる一時だった。
雪解け水を伝わせてちびてゆくつらら、雪間に顔をのぞかせるふきのとう…


バスが来る。雨上がりの空を見上げたら、雲の切れ目から青空が透けて見えた。


(イチ)