東のエデン(著:杉浦日向子)

東のエデン (ちくま文庫)

東のエデン (ちくま文庫)

杉浦日向子の著作が続きます。この本は彼女の明治初頭を舞台にした作品を集めた一冊。


珍しく外国人を主人公とした「東のエデン」もいいけれど、元は身分の違う若き学生達を描いた「閑中忙あり」の連作が良い。「百日紅」や「百物語」ほどの独創性は無いものの、登場人物たちの魅力で読ませます。


しかし、この人の作品いずれにも言えることなのだけど、この魅力的な登場人物たちをもっと見たいと願っても果たされない事の虚しさを感じてしまうんですよね。
いや、魅力的な登場人物と書いたけれど、これは正確じゃないかもしれない。登場人物たちの魅力をもっと引き出せるのびしろがあるのに、と思わせると言うか、まだまだこれから面白くなるところなのに・・・と思わせると言うか。


最後に描かれた後日譚ならぬ前日譚で、古い日本画に反発して師匠の元から去り車夫となった妹尾が、異人のやりかたに違和感を感じつつも西洋画に惹かれていく姿と、海の彼方を眺めて言う最後の台詞「ヨーソロ ニッポン」がなんとも言えずに良いです。


イチ