思い出す事となど (著:夏目漱石)

思い出す事など 他七篇 (岩波文庫)

思い出す事など 他七篇 (岩波文庫)

そういえば夏目漱石のエッセイを読むのは初めてかもしれない。明治43年のいわゆる修善寺の大患後に書かれた随筆をまとめたもので、大量に喀血をして倒れた瞬間のことも、自身の筆により冷静でどこか呑気に回想されています。

もともとこの本を手にしたのは昨年の末だったろうか。最近は複数の本を平行して読むことが多いので、購入してもすぐには読みきらずに枕元に置いていたのだけど、某ノロとおぼしき病にやられて寝込んでいるときに一気に読み終えました。で、病床の描写や心情に妙に共感を覚えてしまうところが多かったんですね。今思えば漱石と自分の病の重篤さなんて比較にならないし、笑い話以外の何物でもないのですが(笑)

漱石は喀血をして倒れた時のことや、枕元で医者達が「駄目だろう」などと話し合ったりする場面を飄々と回想しているのですが、生死を彷徨っている人間の意識というのは、傍目から見れば意識があるのかないのか解らないような状態に見えても、実際そんなものかもしれませんね。

ちなみに、青空文庫にも掲載されているのですが、やはり横書きの日本語はそれだけで読む気が失せます・・・。

イチ